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永田町に秋雨が落ち、緊張がじわりと立ちのぼる。自民党は2025年10月4日午後、石破茂総裁の後任を選ぶ総裁選の投開票に臨む。高市早苗氏、小泉進次郎氏、林芳正氏、茂木敏充氏、小林鷹之氏の5人が名乗りを上げ、物価高への処方箋と財政の向き合い方を競う。結果は夕方にかけて判明する見込みで、市場の視線も熱を帯びる。
午後に投開票、結果は夕方へ
党本部の告知と運営情報によれば、総裁選は10月4日に議員投票と党員・党友票の開票が並行して進む段取りだ。党員投票はすでに期日までに郵送を済ませる方式がとられ、当日は国会議員の投票に続いて集計が進む。決選投票に至った場合は、結果判明が15時20分ごろになるとの見通しが示されている。
選出の仕組みは、まず国会議員票と全国の党員・党友票を合算して過半数を競うのが基本線だ。初回で過半数に届かない場合、上位2人による決選投票に移り、国会議員に加えて都道府県連の代表票が鍵を握る構図となる。いずれの方式でも、同日のうちに新総裁が判明する段取りと映る。
会場周辺では、候補者陣営のスタッフが雨に濡れた資料箱を抱え、出入りする議員に最後の声をかける光景が広がる。政策パンフレットが机に積まれ、取材陣のカメラが一斉にシャッターを切る。午後の短い時間に、党の針路を決める票が重ねられていく。
5人が掲げる経済の処方箋
今回の論戦で各候補がそろって前面に出したのは、家計の負担が続く物価高への対処である。エネルギーや食料価格の高止まりが長引く中、物価と賃金のギャップをどう埋めるかが争点の芯となった。成長と分配の配合をどこに置くか、そして財源をどう確保するかに視線が集まる。
財源の考え方では、需要下支えに踏み込み、機動的な財政出動の余地を強調する声がある一方、将来世代への付け回しを避けるとして財政規律に配慮する姿勢も示されてきた。金融政策だけに依存せず、税や給付の組み合わせで家計を支える方策を練る動きが浮かぶ。重点は共通しつつ、アプローチは分かれている。
産業政策や経済安全保障の経験を前面に出す候補もいる。供給網の再構築、成長分野への投資促進、地方に波及する賃上げの仕組みづくり。論点のリストは似通っていても、優先順位と実行のテンポは違う。誰に有利なのか、偶然か必然か。票の動きは、政策の細部より「やり切る力」への信認で決まる局面もある。
政権の重み、市場のまなざし
市場は政治の「次の一手」を素早く織り込む。結果次第では、円相場や長期金利、株価が素直に反応する可能性がある。財政の積極度合いが意識されれば為替は振れやすく、成長期待が映れば株式に資金が向かうといった定石が頭をよぎる。午後の票読みと並行して、端末の板には神経質な値動きが走りそうだ。
もっとも、いずれの候補も景気の腰折れを避けたい点では一致している。拙速な増税回避や、物価の落ち着きに合わせたきめ細かな支援の絞り込みなど、慎重かつ段階的な運営をにじませる発言が続いてきた。極端な政策転換は想定しづらいとの受け止めもあり、市場は「振れ幅」を測りながら足元の需給を探るだろう。
党内の信任を得た新総裁には、政治資金やガバナンスの信頼回復、マクロとミクロの両面での物価対策、地方の賃上げ定着など宿題が山積する。短期の景気下支えと中期の成長力強化をどう両立させるか。骨太の方針、補正予算、税制改正と続く年末までの工程管理に、早速の手腕が試される。
外交と安全保障、次の一手
次の総裁は、物価や人口構造、移民・人材受け入れといった国内課題に取り組みつつ、対外的にも難しいかじ取りを迫られる。米国ではトランプ大統領が在任しており、通商や技術、エネルギーをめぐる交渉の地合いが変わっている。相互の利害を見極め、同盟と経済安全保障の再設計を進める視界が必要だ。
インド太平洋の安全保障環境は厳しさを増す。防衛生産や装備移転の枠組み、重要鉱物や半導体のサプライチェーン強化。外務・防衛・経産の連携を軸に、同志国と標準やルールづくりを主導できるかが問われる。内政の足場を固め、外交で発信力を高める。二つの歯車がかみ合って初めて、信頼が積み上がる。
あすの国会議員投票と開票作業は、党の新しい顔を決めるだけでなく、経済と外交の羅針盤を据え直す儀式でもある。誰が一歩抜け出すのか。偶然の追い風か、積み上げた下支えか。永田町の静けさの裏側で、次の四半期を左右する一票が重たく響いている。
