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韓国メディアが、日本企業が中国向けの半導体材料フォトレジストの供給を実質的に止めたと伝えた。12月3日の記者会見で木原稔官房長官は、貿易管理の変更は行っていないと強調し、報道との温度差が浮かんだ。半導体工場のラインを支える材料が外交の文脈で語られるいま、相互依存のサプライチェーンはどこまで政治に巻き込まれていくのか。
工場ラインの不安と「報道だけが先行する」怖さ
韓国メディアの報道は、日本から中国へのフォトレジスト出荷が止まり、中国の半導体メーカーの生産に支障が出る恐れがあると指摘した。これに対し木原官房長官は、政府として輸出管理の運用を変えていないと説明し、公式には新たな規制は存在しないとの立場を示した。
フォトレジストは、シリコンウエハー上に微細な回路を描く際に使う感光性の材料で、一定品質のものを安定的に確保できなければ量産ラインは簡単に止まってしまう。材料の切り替えには時間も検証も必要で、代替先を増やすにもコストがかかるのが現場の実情だ。
公開されている情報だけでは、個々の企業の取引にどこまで変化が生じているのかは分からない。サプライチェーンの一部で実務上の調整が起きているのか、それとも誤解が独り歩きしているのかも判断しづらい。ただ、報道一つで工場や取引先に不安が走る構図自体が、日中の材料依存の高さを物語っている。
水産物から観光まで 日中で広がる「経済カード」
ロイター通信によれば、高市早苗首相が台湾有事での自衛隊の関与に言及した後、中国は日本産水産物の全面禁輸に動き出したとされる。中国政府は自国民に日本への渡航自粛も呼びかけ、旅行キャンセルが相次ぐなど、外交上の対立が漁業や観光といった生活に近い分野へ波及している。
時事通信が伝えた米国のグラス駐日大使の発言では、中国が日本に対して経済的な圧力を強めているとの懸念が示され、日本の漁業者こそ水産物禁輸の実質的な被害者だと強調した。軍事ではなく貿易や観光を通じた圧力のかけ合いが、国際社会からも注視されている。
こうした流れの中で、半導体材料という戦略色の強い品目に「供給停止か」との情報が乗れば、たとえ日本政府が輸出管理の変更を否定していても、経済カードの一つとして利用されるのではないかという疑心はくすぶる。食料からハイテク材料まで、日中の関係悪化が波及し得る範囲は広い。
対話を探る日本、備えを迫られる現場
一方で、木原官房長官は11月18日の会見で、G20サミットに合わせた日中首脳会談を中国側が否定したことについて、「日中間のさまざまな対話に日本側はオープンだ」と共同通信に語っている。安全保障や経済を巡る対立が深まる中でも、外交ルートは閉ざさないとの姿勢を繰り返し打ち出してきた。
半導体材料を巡っても、今後正式に輸出規制が強化されるのか、あるいは現状維持のまま企業同士の調整に委ねられるのかは見通せない。多くの先進国のメーカーは、重要部材を限られた供給国に頼ってきた経緯があり、企業は在庫の積み増しや取引先の分散など、突発的な制限に備える動きを強めざるを得ない。
材料も水産物も、国境をまたぐ品目が外交の波に左右される時代に、現場は静かにリスクと向き合い続けることになる。
