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国境の空に緊張が戻った。ポーランドは2025年10月5日、ロシアがウクライナ全土へ大規模な空爆を仕掛けたことを受け、航空機を緊急発進させて領空の安全確保に動いた。同日、ウクライナ西部リビウ州ではミサイルと無人機が相次ぎ、市内の一部は停電に陥った。南東部ザポリージャでも死傷者と大規模停電が出ており、戦火の揺らぎがNATOの東端まで迫る構図が浮かぶ。
国境の空に走った緊張
ポーランド作戦司令部は5日、同国と同盟国の航空機が自国の領空で活動し、防空とレーダー監視を最高度に引き上げたと示した。発信は現地の朝に重なり、日本時間では同日午後に当たる。具体的な発進機数は明らかにされていないが、緊急発進の判断が短時間で下された事実自体が、国境を越える波及リスクを物語る。
現時点で確認されている範囲では、ロシアの攻撃はミサイルと無人機を組み合わせた広域同時多発型で、ウクライナ各地のエネルギー関連施設も狙われたとみられる。NATO加盟国のポーランドは、昨今の領空接近事案の連鎖もあり、東側空域の監視を強めてきた。今回のスクランブルは、同盟の抑止姿勢を可視化する動きとも映る。
一方で、ロシア側からは本件に関する直接の説明は出ていない。意図や狙いが不鮮明なまま攻撃の強度だけが増す状況は、偶発的な越境や誤認を誘発しやすい。誰に有利なのか。現地の緊張が高まるほど、隣国の対空態勢は硬直化し、境界線は細る糸のように張り詰めていく。
リビウで続いた爆発音と停電
ポーランド国境から約70キロのリビウでも、住民は長い夜を過ごした。日本時間10月5日午後にかけ、防空警報は数時間に及び、無人機への対処に続いてミサイル攻撃が重なったとされる。現時点の公的発表では、同市と周辺で住宅や学校、宗教施設などにも損壊が出ており、一部地域で停電が続いた。
人的被害は重い。確認されている範囲で、リビウでは同じ家族4人が死亡した。市内では公共交通の始動が遅れ、通りに出ること自体が危険と受け止められた時間帯もあった。爆発音が収まっても、割れた窓と散乱した破片が朝の街に残り、人々の足取りは慎重さを増した。
今回の空爆は、冬を前にしたウクライナの電力・ガス供給網にも打撃を与えたとみられる。エネルギー施設は狙われやすく、復旧も難しい。結果として停電は市民生活と病院、公共交通の再開判断を遅らせる。被害の全容はなお把握途上だが、攻撃が続けば都市機能の疲弊が広がるのは必然である。
ザポリージャの夜と、電力網の痛手
ウクライナ南東部の州都ザポリージャでは、4日深夜から5日にかけての攻撃で1人が死亡、9人が負傷した。日本時間では5日未明から朝に重なる時間帯で、住宅地やインフラに被害が生じた。州当局は停電発生も伝えており、広範な配電網の停止で7万世帯超が一時的に電力を失ったとされる。
この地域は前線に近く、無人機と誘導弾が混用されることで迎撃の難度が増す。人的被害が出た夜、救急と修復の車列が交錯し、暗闇の街区で懐中電灯の光が行き交った。復旧班はまず倒壊の危険部位を外し、次に窓や屋根を応急補修しながら、医療搬送の動線を確保する。そんな時間が積み重なる。
ロシア国防省は軍事・エネルギー関連を標的とする作戦だと主張してきたが、実際には民間の住居や学校も損壊し、避難や停電が生活を直撃している現実がある。現時点でロシア側から本件への新たなコメントは確認されていない。砲声が遠のいた後の静けさほど、被害の輪郭が濃く浮かぶ瞬間はない。
