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米国のルビオ国務長官が、12月3日にブリュッセルで開かれるNATO外相会合を欠席する見通しとなった。年2回の定例会合に米外交トップが姿を見せないのは極めて異例で、ロシアの侵攻が続くウクライナ情勢を巡る協議が山場を迎えるなか、同盟国の間には不安も広がる。米国の「空席」は、NATOとウクライナ支援への信頼をどこまで揺らすのか。
同盟国が感じる不安と現場への波紋
複数の米政府当局者によれば、会合にはルビオ氏ではなく、副長官のクリストファー・ランドー氏が出席する方向だという。NATO外相会合は通常年2回開かれ、加盟国がウクライナ支援や対ロシア政策の方針をすり合わせる場とされてきた。その席に米国務長官がいないのはまれであり、ロイター電などは「欧州の安全保障への米国の関与に対する疑念を強めかねない」と伝えている。
ウクライナや欧州各国の外交当局にとって、今回の欠席が象徴的なのはタイミングだ。米国は、ロシアとの和平合意が成立するまでウクライナへの安全保障の約束は出さないとの立場を示し、欧州諸国は「ロシア寄りだ」との懸念を強めているとポリティコ紙は報じた。交渉の主役であるはずの米国務長官がNATOの場に姿を見せないことは、特にキーウにとって「自分たち抜きで話が進むのでは」という不安を増幅させやすい。
もっとも、NATO側は「各国外相が会合の一部を欠席することはこれまでもあった」と説明している。ただ、米国は同盟の中核と見なされてきたため、米国務長官の不在は他国と同列には語りにくい。前線で戦うウクライナ兵士や避難生活を送る市民にとっても、こうした外交上のシグナルは支援の持続性を測る手がかりとなる。政治日程上の事情だとしても、現場に届くメッセージは単純ではない。
なぜ米国務長官は外相会合を外すのか
なぜ今回は、あえて外相会合を副長官に任せるのか。米メディアi24NEWSによれば、ある米国務省高官は「国務長官が全ての会合に出席するのは現実的ではない」と述べ、ルビオ氏は就任後すでに多数の同盟国との協議を重ねていると強調した。つまり、欠席は同盟軽視ではなく、限られた時間を別の場に振り向ける判断だという説明である。
実際、ルビオ氏は11月下旬にジュネーブでウクライナ側と協議し、「これまでで最も前進した」と評価している。米国が提示したとされる和平案をめぐっては、ウクライナ軍の規模を制限する構想などが欧州で議論を呼んでおり、米・ウクライナ・欧州の三者協議は緊張をはらむ。国務長官がNATOの全体会合よりも、こうした限定メンバーでの交渉に時間を割こうとしている可能性はある。
背景には、トランプ政権が掲げる「欧州は自らの防衛費を増やすべきだ」とのメッセージもある。NATO防衛費の目標2％達成を迫る一方で、米国内では対外関与への疲れがくすぶる。国務長官が年2回の外相会合すべてに出席しないという選択は、形式より実利を重んじる姿勢の表れとみる向きもあるが、同盟国に対しては「これまで当然とされた米国の役割は変わりうる」と暗に示すシグナルにもなりうる。
NATOと米国の距離感、これからのシナリオ
今回の欠席はまだ最終決定ではなく、直前に予定が変わる可能性も指摘されている。一方で、ロイターやキーウ・ポスト紙は、12月のNATO外相会合から米国務長官が完全に姿を消せば、2003年以来の異例の事態になると伝えた。たとえ一度きりであっても、その事実自体が、欧州が自らの安全保障をどこまで米国に依存できるのかという問いを改めて突きつける。
欧州側はすでに、ウクライナへの長期的な安全保障枠組みづくりで主導権を強めようとしている。フランスや英国は、自国部隊の関与や凍結ロシア資産の活用など、米国の外にある選択肢も模索していると各紙は報じる。NATOのテーブルに米国務長官の椅子が空いていても、加盟国がどの程度自前のリスクを引き受ける覚悟を持つのか次第で、実際の抑止力は変わってくる。
ウクライナにとって重要なのは、会議場での写真よりも、弾薬や防空システムが途切れず届くかどうかだ。ただ、その供給を左右する政治判断は、今回のような会合の空気からも少なからず影響を受ける。米国の一席が空くNATO外相会合は、同盟の将来像を映す試金石になるかもしれない。ひとつの欠席が示す含意を、各国は静かに見極めようとしている。
