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ろうそくの炎が小さく揺れ、すすけた壁に影がのびる。2025年10月5日にかけての夜明け前、ロシアのミサイルとドローンがウクライナ各地を襲い、リヴィウでは一家4人が命を落とした。翌6日、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、攻撃に使われた兵器に外国製の電子部品が10万点以上組み込まれていたと明かし、制裁の抜け道を断つよう各国に迫った。言葉の背後には、戦場と工場、そして国境をまたぐ長い供給網の影が浮かぶ。
ミサイルとドローンの一夜、にじむ供給網の輪郭
静かな朝を破ったのは、断続的に鳴り響く警報と衝撃音だった。ウクライナ当局は、同日未明の波状攻撃で少なくとも5人が死亡し、そのうち4人はリヴィウ近郊で暮らす一家だったと伝えた。家は一瞬で崩れ、15歳の少女を含む命が消えたとみられる。広範囲でエネルギー施設や住宅が傷つき、停電と煙の帯が街を覆った情景がにじむ。
投入された兵器の規模をめぐっては、報道に揺れがある。ウクライナ側の説明ではミサイルは50発超、ドローンは約500機に達したとされる一方、別の報道ではドローン140機とミサイル23発との推計も出ている。いずれにせよ、リヴィウ州にとっては侵攻後最大級の打撃であり、防空網の隙間を突く集中的な攻撃だったと映る。
この夜の攻撃を受け、ゼレンスキー氏は10月6日に「使用されたロシアのミサイルやドローンには10万点以上の外国製部品が確認された」と発言した。英独日米など同盟国で製造された部品が兵器に組み込まれているとして、さらなる「効果的な制裁」を訴えたのである。ドローンの飛行制御用マイクロコンピューターが英国製だと指摘し、回避スキームを遮断する重要性を強調した点が重い。
英国の取り締まり強化、どこまで届くか
英国政府は「ロシアの兵器から英企業の製品が見つかった」との報告を深刻に受け止める姿勢を示している。2025年2月24日には、侵攻後最大規模となる100件超の新たな制裁指定を発表し、ロシア軍需の供給網やそれを支える第三国の仲介を狙い撃ちにした。マイクロプロセッサーや機械工具など、兵器システムに直結する分野へ焦点を絞ったのが特徴である。
さらに4月24日には、対ロシアの新たな貿易制裁が施行され、輸出規制の網は厚みを増した。通知は事業者に向け、対象品目や手続の更新点を細かく示し、輸出管理の順守を促している。英政府内では、ビジネス貿易省や輸出管理を所管する部局が、実務の目詰まりを解消しつつ、第三国経由の流入を監視する体制づくりを急いでいるとみられる。
違反に対しては、巨額の罰金や刑事訴追を含む厳罰が科されうるという緊張感が広がっている。英政府は、中央アジアやトルコ、タイ、インド、中国など第三国に根を張る供給網の摘発に力点を置くと強調した。ゼレンスキー氏が示した「企業と製品の詳細データ」と各国の執行力が結びつくか否かが、部品流入を断ち切る分水嶺になる。
制裁の隙間を埋める時間、戦場からの問い
ロシアは制裁の網をくぐる形で調達経路を編み直し、軍需の生産を維持してきたとみられる。エネルギー輸出の再配分や軍事支出の積み増しにより、短期的な崩壊は避けているとの見立ても根強い。他方で、人手不足やインフレによる歪みが蓄積し、経済の基礎体力に陰りが生じている兆しも指摘されるようになった。
今回、英政府が矢面に立つ「第三国経由の遮断」は、偶然の産物ではない。政権交代後の対露政策を支える基盤として、制裁の対象拡大と執行の両輪を回す構えが強まっている。油槽船の「シャドーフリート」や機微技術の再輸出といった新手に対し、どれだけ迅速に仕様追加や金融制裁を上書きできるかが勝負どころだ。
ラパイウカで供えられた花の香りはすぐに冷気にのまれ、焦げた木の匂いだけが残った。誰に有利なのか、どこにほころびがあるのか――問いは戦場とサプライチェーンの両端から迫ってくる。10月6日のゼレンスキー氏の発言は、制裁を「量」から「質」へ、すなわち抜け道を潰す執行と監視の強化へと移すべき時が来たことを示唆したと言える。次の夜を変えられるかどうかは、各国の現実的な手当てにかかっている。
