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バルト海沿岸の空にわずかな乱れが走った。リトアニア国防当局は23日、ロシア軍機2機が自国の領空に約18秒間侵入したと発表した。NATOの防空任務に就いていたスペイン空軍の戦闘機が直ちに緊急発進し、情勢は一気に緊張した。時間にして瞬きほどだが、同盟国の領空で起きた「18秒」は、戦争の余波が欧州の境界で続く現実を映している。
境界線で起きた「18秒」
発表によれば、侵犯したのはスホイ30戦闘機とイリューシン78空中給油機である。23日15:00（協定世界時）、つまり24日 00:00 ごろ、日本時間で日付が変わる頃合いに、ロシアの飛地カリーニングラード方面から約700メートル、リトアニアの領空に入ったとされる。給油訓練の一環だった可能性があるとの見立ても示されたが、領空を越えた事実の重さは消えないと映る。
NATOのバルト空域防空任務に参加していたスペイン空軍のユーロファイターが即応し、空域の監視と識別に入った。緊急発進は常態化しているが、自国領の侵犯が確認されたケースは心理的な圧迫感が別格である。現時点で確認されている範囲では、交戦や負傷の情報はないが、偶発的な接触の危うさは常に隣り合わせだとみられる。
応酬する発表、走る外交
リトアニア側は、北大西洋条約機構の最高意思決定機関である北大西洋理事会に事案を報告した。並行して在リトアニアのロシア外交団トップを呼び、厳重に抗議したと説明している。NATOの仕組みを通じ、同盟の監視と抑止を可視化する動きだといえる。一方、ロシア国防省は他国領空の侵犯を否定する立場を示し、立場は平行線をたどっている。
声明は言葉を選ばない。リトアニア政府内からは、国際法や近隣の安全保障を軽視する行為だと強い非難が広がっている。実際、領空の主権は国家の根幹であり、秒単位の侵犯でも抗議と検証の対象になるのが国際実務である。対照的にロシア側は訓練飛行の常態性を主張しがちで、解釈の溝が深い現状が浮かぶ。
バルトの空で続く圧力
今回の一件は孤立した現象ではない。直近でも、バルト海沿岸では計器の切断や飛行計画未提出といった国際飛行規則違反が相次ぎ、NATO戦闘機の識別・随伴が繰り返されている。10月中旬の一週間だけでも、情報収集機IL-20やSU-30などに対するスクランブルが複数回発生したと記録されており、周辺空域の緊張は慢性化していると映る。
前月にはエストニア領空でもロシア軍機による侵犯が伝えられ、バルト3国の安全保障懸念は共有の課題になっている。リトアニア外務当局はその際、ロシア側への強い抗議を明らかにしており、各国が連携して「空の秩序」を支える構図が強まっている。小さな侵犯の積み重ねが大きな事故や誤算につながる前に、透明性と連絡の確保が問われている。
