本サイトの記事や画像はAIが公的資料や報道を整理し制作したものです。[続きを表示]ただし誤りや不確定な情報が含まれることがありますので、参考の一助としてご覧いただき、実際の判断は公的資料や他の報道を直接ご確認ください。[私たちの取り組み]
記者団の前で足を止めた高市早苗首相は、険しい表情を保ちながらも言葉を選ぶように語った。台湾をめぐり中国との緊張が続くなかでも、「建設的で安定した関係を築きたい」と強調し、日本政府の台湾に関する立場は変わっていないと念を押した。発言があったのは2025年11月21日、主要20か国・地域首脳会議に向けて出発する直前の羽田空港だった。
高市首相が語った「建設的」な日中関係
高市首相は、この日あらためて習近平国家主席との首脳会談に触れた。10月末の会談では、両国が「戦略的互恵関係」を包括的に進め、建設的で安定した関係を築くという方向性を確認したと説明し、中国は重要な隣国であるとの認識も繰り返した。一方で、東シナ海での軍事活動などには引き続き懸念を伝えつつ、対話の窓は閉ざさないという日本政府の姿勢も示した。
台湾をめぐっては、中国が高市首相の国会答弁に抗議し発言の撤回を求めている。これに対し首相は、いかなる事態が「存立危機事態」に当たるかは、実際に起きた状況を踏まえて政府が総合的に判断するとの従来方針に変わりはなく、台湾に関する日本政府の立場も一貫していると語った。平和安全法制が成立した安倍政権当時から同じ説明を繰り返してきたとも付け加えた。
台湾有事発言が広げた波紋とぎりぎりの距離感
発端となったのは、11月7日の衆院予算委員会での発言だ。高市首相は、台湾有事で戦艦を用いた武力行使が行われれば、日本の存立を脅かす「存立危機事態」になり得るとの見解を示した。中国外務省や在外公館の幹部はこれを台湾海峡への武力介入の示唆だと受け止め、強い調子で批判と抗議を重ねている。北京で予定されていた民間対話「東京−北京フォーラム」が延期され、中国はG20サミットでも李強首相と高市首相の会談予定はないと繰り返している。
それでも日本政府は、台湾問題への基本的な立場は変えていないと強調する。1972年の日中共同声明で、中国が台湾を自国の不可分の一部とみなす立場を「十分理解し、尊重する」と表明したことを踏まえつつ、台湾をめぐる問題は対話によって平和的に解決されるべきだとする方針を掲げている。2015年に成立した安全保障関連法では、日本と密接な関係にある国が攻撃を受け日本の存立が危うくなった場合に「存立危機事態」と認定されれば、自衛隊が集団的自衛権を行使できる仕組みになっている。
強い抑止を示す安全保障上のメッセージと、隣国との関係を安定させたいという外交上の願い。そのどちらもが高市首相の言葉の中に同居しているように見える。台湾情勢をにらむ各国の思惑が複雑に絡むなか、ひとつひとつの表現がこれまで以上に重みを帯びている。静かに交わされた一言一言が、海の向こうの緊張を測る物差しにもなりつつある。
