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トランプ米政権が、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)にテロ関連の制裁を科すことを検討していることが分かった。数百万人のパレスチナ難民を支える国連機関への制裁は前例がなく、実現すればガザをはじめとする地域の支援体制に大きな揺さぶりとなる。対テロ政策の強化は、難民の生活とどう折り合いをつけようとしているのか。
難民支援の生命線に走る不安
UNRWAは1949年に設立された国連機関で、ヨルダンやレバノン、シリア、ガザ、ヨルダン川西岸などで約600万人のパレスチナ難民に教育や医療、食料配給を提供してきた。ガザでは戦闘の長期化で多くの国内避難民がUNRWAの学校や施設に身を寄せ、飲食料や水、衛生用品の大半を同機関の支援に頼っている。
こうした中で米国がテロ関連制裁を発動すれば、UNRWAの資金調達や銀行取引が大きく制約され、物資輸送や職員給与の支払いにも支障が出る可能性がある。米国は長年UNRWA最大の拠出国だったが、2024年1月にはイスラエルによる職員関与疑惑を受けて拠出を凍結しており、現場ではすでに事業縮小や人員削減に追い込まれている。制裁が加われば、残された支援網までも痩せ細る懸念が広がる。
米政権内で揺れる判断 テロ対策と人道の綱引き
今回の制裁案は、UNRWAがイスラム組織ハマスと結び付いているとのイスラエルや米政権一部の主張を背景に浮上した。米国務省の一部幹部は、UNRWAを外国テロ組織に指定する案も含め「全ての選択肢がテーブルにある」として、強硬な制裁を模索しているとされる。実行されれば、UN機関そのものがテロ資金対策の標的となる異例の一歩となる。
これに対し国連やUNRWAはこうした主張を一貫して否定している。イスラエルの告発を受けて行われた独立パネルなど複数の調査は、教職員の一部に中立性を欠く言動があったとしつつも、UNRWAがテロ組織と組織的に共謀しているとみなす決定的な証拠はないと結論づけた。UN事務総長も、同機関は人道支援の「不可欠な存在」だと強調している。
米政府内でも、国連機関にテロ関連制裁を科すことへの慎重論は根強い。制裁の範囲によっては、UNRWAを資金面で支える欧州や中東の同盟国、さらには国連と取引する企業や銀行まで二次制裁の対象となる恐れがあり、法的・外交的な波紋は大きいからだ。テロ資金を断とうとする試みと、難民支援の土台を崩さないことをどう両立させるのか。その選択が、ガザを含む地域の人道危機の行方を左右しようとしている。
参考・出典
- US weighs hitting UN Palestinian refugee agency with terrorism-related sanctions
- UNRWA Representative Office for Europe – Agency Overview
- UNRWA: Review finds 'neutrality' issues, no terror proof – DW – 04/23/2024
- 'Neutrality' issues found at UN agency for Palestinians, but no terrorism proof
- US considers sanctions against UNRWA | The Jerusalem Post
