トルコ、ロシア産ガス契約を1年延長　黒海緊迫下で安定供給を優先

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2025.12.05

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ロシア産ガスへの依存を減らしつつも、目先の安定供給は手放せない。トルコのバイラクタル・エネルギー相は、年末に期限を迎えるロシアとの天然ガス輸入契約2件（計220億立方メートル）の1年間延長を決めたと明らかにした。一方で、黒海トルコ沖でタンカーへの攻撃が相次ぐ中、ロシアとウクライナを含む全ての当事者にエネルギーインフラを戦闘から切り離すよう繰り返し伝えている。戦時下の黒海で、トルコはロシア依存とエネルギー安全保障の両立という難題に向き合っている。

市民と企業を支える「1年延長」と黒海リスク

トルコの天然ガス輸入量は年間およそ500億立方メートルで、そのうち4割強をロシアが占めるとされる。今回延長される2本の契約は、合計220億立方メートルと全体のかなりの比率を占める規模だ。冬場の需要期を前に、突然の契約切れによる供給不安を避ける狙いがあるとみられ、都市部の暖房や工場操業を気にする市民や企業にとっては「ひとまず1年の猶予」が確保された形になる。

ガスは家庭の暖房だけでなく、発電や産業用燃料としても使われており、トルコでは国民の大半がガス網につながっている。価格高騰や供給途絶が起きれば、電気料金から家計、雇用まで連鎖的な影響が及びかねない。欧州各国がロシア産ガス依存を急減させた際の混乱を見てきたトルコでは、「当面の安定確保」と「中長期の脱依存」をどう両立させるかが、生活者に直結する課題になっている。

そうした中で、黒海トルコ沖ではロシア向けタンカーが無人機攻撃を受ける事案が報じられ、海上輸送路の安全性に不安が広がった。黒海の海底にはロシアからトルコへガスを送るパイプラインも通っており、万一攻撃対象になれば、契約を延長しても物理的にガスが届かないという事態もあり得る。契約延長は足元の安心材料ではあるものの、黒海情勢いかんでは市民や企業が抱えるリスクは完全には消えない。

ロシア依存からの脱却と「エネルギーを戦争から切り離す」試み

バイラクタル氏は今回の延長について、ロシア産ガスの比率を40％未満に抑えつつ、短期契約を増やして供給源を多様化する戦略の一環だと説明している。トルコは近年、米国などからのLNG調達やトルクメニスタン経由のガス導入、自前の黒海ガス田開発を進めてきた。ロシアとの関係を完全には断ち切れないまま、契約期間をあえて1年にとどめることで、価格交渉や調達先の組み替えの余地を残した形だ。

一方で同氏は、黒海沿岸で起きたタンカー攻撃を受け、ロシア、ウクライナ、その他全ての当事者に対し、エネルギーインフラを戦争の対象から外すよう繰り返し要請していると明かした。NATO加盟国でありつつ、ロシアともパイプを持つトルコは、攻撃の自制を訴えることで、ブルーストリームやタークストリームといった自国向けパイプラインの安全確保を図ろうとしている。エネルギーの中立性を強調するメッセージは、自国の供給網と黒海全体の安定を守るための外交的な布石でもある。

ただ、インフラを「聖域」と位置づける呼びかけがどこまで効力を持つかは不透明だ。ウクライナでは、ロシア軍の攻撃で電力・熱供給が繰り返し止まっており、エネルギー施設が既に戦争の主戦場の一つになっている。トルコに残された現実的な選択肢は、ロシアとの短期契約を使いこなしつつ、LNGや自国産ガスによる多角化を急ぎ、同時に黒海での外交的な働きかけを積み重ねることなのかもしれない。

市民と企業を支える「1年延長」と黒海リスク

ロシア依存からの脱却と「エネルギーを戦争から切り離す」試み

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