米特使「和平は目前」　ウクライナ戦の残る2争点が最大の焦点に

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2025.12.08

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ロシアの侵攻が続くウクライナ戦争を巡り、トランプ米政権のキース・ケロッグ米大統領特使が12月6日、戦争終結に向けた合意は「非常に近い段階にある」と語った。決着は残る2つの主要争点の処理にかかっているとし、一方でロシア大統領府は米国案の一部に「根本的な変更が必要だ」と主張している。和平まで残った条件は何で、そしてその重みを誰が負うのか――本稿では、その問いを手がかりに読み解く。

「最後の10メートル」が示す、前線と市民の重い現実

ケロッグ氏は6日、米カリフォルニア州で開かれたレーガン国防フォーラムの場で、和平交渉は「最後の10メートルに差し掛かっている」と表現した。ロイター通信などによれば、米側が示す案で最大の焦点となっているのは、東部ドンバス地域の将来と、ロシア軍が掌握する欧州最大の原発ザポロジエ原子力発電所の扱いだ。ウクライナとロシア双方で犠牲者が200万人を超えたとも伝えられ、ケロッグ氏は「地域紛争として前例のない規模だ」と危機感をにじませた。

ただ、交渉が「あと一歩」と言われる一方で、戦闘は止んでいない。AP通信などは、同じ時期にもロシア軍によるミサイルや無人機攻撃が各地のエネルギー施設や交通網を繰り返し襲ったと報じている。停電やインフラ被害は、前線から遠く離れた都市部の生活にも影を落とし、ウクライナ国内では「和平が近いと聞かされても、日常は依然として空襲警報に支配されている」との受け止めもある。

ウクライナのゼレンスキー大統領は、トランプ政権関係者との協議について「建設的だが容易ではない」と述べ、領土や安全保障に関わる条件には慎重な姿勢を崩していないと各紙は伝える。前線の兵士や家族にとって、「最後の10メートル」は希望の合図であると同時に、どこまで譲歩が求められるのか見通せない不安の象徴にもなっている。

米露の思惑と、和平案が抱える不透明さ

ケロッグ氏は来年1月に退任予定で、トランプ大統領にとっても任期中に和平を実現し「仲裁者」として記憶されたい思惑があると、欧米メディアは指摘している。米国案は、ドンバスとザポロジエ原発という2つの難題を整理し、その他の停戦条件を一括して収める構図とされる。しかし、安全保障の具体的な担保や、ウクライナの復興支援の枠組みなど、長期的な枠組みは必ずしも詳細が見えていない。

一方のロシア大統領府は、米国の提案には「根本的な修正」が必要だと表明し、領土問題を巡る立場の差は依然として大きい。ロシア側はドンバス全域の支配や、占領地域の地位を事実上認めるよう強く求めていると報じられており、ウクライナがこれを受け入れれば、自国領土の恒久的な喪失につながる懸念がある。領土線をどこに引くのかという線引きは、交渉の「最後の距離」を決定づける最大の政治判断になりつつある。

さらに、争点の1つであるザポロジエ原発を巡っては、国際原子力機関（IAEA）が度重なる停電や周辺の軍事行動に強い警戒を示してきた。原発は現在も冷温停止状態にあるが、外部電源への依存など安全マージンは十分とは言えず、「誰の管理下に置くか」はエネルギーだけでなく核安全保障の課題でもある。仮に戦闘が収束しても、原発の扱いを誤れば新たな危機の火種となりかねない。

こうした中で浮かび上がるのは、「和平の代償」を誰がどこまで負担するのかという問題だ。領土や原発の将来をめぐって拙速な妥協をすれば、短期的には砲撃は止んでも、長期的な不安定要因を抱え込む恐れがあるとの見方もある。和平が近いという言葉が繰り返されるほどに、その「最後の10メートル」をどのような条件と順番で進むのかが、国際社会と当事者双方に突き付けられている。

「最後の10メートル」が示す、前線と市民の重い現実

米露の思惑と、和平案が抱える不透明さ

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