国連安保理がトランプ米大統領のガザ和平案を支持、停戦定着へ

ニューヨークの会議場で、各国の代表が静かに手を挙げた。国連安全保障理事会は17日、トランプ米大統領が示したガザ地区の和平計画を支持する決議案を、賛成13か国、反対なしで採択した。ロシアと中国は棄権したものの、2年に及んだ激しい戦闘を止めた停戦を、いかに定着させるかという新たな段階に世界は踏み出した。

安保理が後押しした20項目の和平案とISF

決議は、アメリカが提出した20項目から成る和平案を全面的に後押しする内容だ。中心に据えられたのが、ガザに展開する国際安定化部隊ISFの創設である。アメリカはすでに複数の国が参加を申し出ていると説明し、停戦維持に向けた新たな安全保障の枠組みを打ち出した。

ISFはイスラエルやエジプト、訓練を受け審査を経たパレスチナ警察と連携し、国境地帯の治安維持にあたるとされる。あわせて、ハマスを含む「非国家武装組織」の恒久的な武装解除を進め、テロインフラの解体や武器の回収を担う。米国のウォルツ国連大使は、パレスチナ市民の安全確保も主要任務だと強調した。

この和平案は段階的に進められている。第1段階は2025年10月10日に発効し、イスラエルとハマスの停戦や、イスラエル人人質とパレスチナ人被拘束者の引き渡しが始まった。ウォルツ大使はこれを「非常に壊れやすい最初の一歩」と述べ、今回の決議でその土台を国際社会が支える形になったとの認識を示している。

ガザ統治と再建を担う「平和評議会」

決議には治安だけでなく、ガザの統治と再建を管理する枠組みも盛り込まれた。安保理は「平和評議会」と呼ばれる暫定統治機関の設立を承認し、パレスチナ人の専門家からなる非政治的な委員会がガザ行政を監督する構想だ。インフラ復旧や住宅再建、人道支援の配分は、世界銀行が支援する信託基金からの資金を用いて進められる。

平和評議会とISFは、パレスチナ側の委員会や警察と協力して活動すると定められている。これまでガザの警察はハマスの統制下に置かれてきたが、その役割は徐々に新たな体制へ移る見通しだ。トランプ大統領は安保理で今回の採択を「歴史的」と述べ、平和評議会を承認し支持するものだと強調した。自身が議長を務める最終メンバーは近く発表するとしている。

大統領は自身のソーシャルメディアでも、この決議は国連史上でも最大級の承認として記憶されるだろうと書き込み、世界にさらなる平和をもたらす「真に歴史的な瞬間」だと誇示した。一方で、グテーレス国連事務総長の報道官は、この合意が現地での具体的かつ緊急の行動に結びつき、最終的に2国家解決を目指す政治プロセスへつながらなければならないと冷静に語った。

歓迎と警戒が交錯する中東と国際社会

しかし、全ての当事者がこの枠組みを歓迎しているわけではない。イスラム組織ハマスは、決議がパレスチナ人の権利や要求を満たしていないとして即座に退けた。メッセージアプリ上の声明では、計画はガザに国際的な「後見体制」を押し付けるものであり、抵抗勢力の武装解除を国際部隊に委ねれば、その中立性は失われ、占領側を支える当事者へと変質すると警告した。

これに対し、パレスチナ自治政府やエジプト、サウジアラビア、トルコなどの地域大国は、決議案の迅速な採択を求めてきた。今回の文書には、当初の草案になかったパレスチナ人の自決権と、国家樹立への信頼できる道筋への言及が加わっている。主要なアラブ諸国が強く働きかけた結果だとされ、自治政府は条件を「緊急かつ即時」に履行する必要があると訴えている。

ロシアと中国は、決議が主要メカニズムの詳細を示していないことや、国連の関与が保障されていない点、2国家解決への明確な再確認が欠けている点を挙げて批判しつつも、パレスチナ側や8か国のアラブ・イスラム諸国が支持したことを踏まえ、拒否権は行使せず棄権にとどめた。パレスチナ国家樹立に強く反対するイスラエルとの隔たりは依然大きく、2023年10月7日の奇襲以降、イスラエル側で約1200人、ガザ側で少なくとも6万9483人が命を落としたとされるなか、この決議が現地の日常をどこまで変えうるのかは、静かな不安と期待のあいだに揺れている。