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米国のヘグセス国防長官は10月31日、クアラルンプールで中国の董軍国防相と会談した。米側は「自国の国益を断固として守る」と強調し、インド太平洋の力の均衡を維持する方針を示した。南シナ海や台湾周辺での中国の活動への懸念も伝達したと報じられている。会談はＡＳＥＡＮ国防相会議の合間に実施された。
会談の狙いと発言の要点
現時点で確認されている範囲では、ヘグセス氏は地域の安定と抑止の維持を掲げ、同盟国・パートナーと連携しながら米国の国益を守る姿勢を明確にした。とりわけ南シナ海の航行の自由や台湾周辺での軍事活動をめぐるリスク増大に懸念を表明し、透明性の向上と責任ある行動を中国側に求めたと伝えられる。一方の中国側は台湾をめぐる問題での「慎重対応」を促し、主権と領土保全を守る立場を改めて示した。これらのやり取りは、対話の継続と危機管理の必要性が両国で共有されつつあることを示唆している。
今回の会談は、二国間の軍高官間のコミュニケーション再開の流れの中で位置付けられる。米中は隔月のような頻度で接触を重ねており、発表によれば9月9日には董軍氏とヘグセス氏がビデオ通話で率直かつ建設的な意見交換を行っている。31日の対面協議は、こうした対話路線の延長線上で実現したものであり、誤解・誤判の回避や不測の事態を防ぐガードレール作りが意図されたとみられる。
米中、衝突回避へ
会談の舞台となったＡＳＥＡＮ国防相会議は、域内の多国間安全保障協力を議論する要の枠組みであり、各国が二国間の懸案を擦り合わせる「対話のハブ」となっている。米国は「紛争は望まない」との立場を繰り返しつつ、同盟・準同盟国との共同訓練や装備協力を通じて抑止力の実効性を高めてきた。今回も「力による現状変更」に反対し、国際法に基づく秩序の堅持を呼びかけた。中国側は平和的発展を掲げながらも核心的利益の防衛を強調しており、両者の立場の相克は残る。ただ、対話の継続により海空域での現場リスクを管理し、偶発的な衝突を避ける努力が広がっている。
今後の見通し
今回の対面協議は、情勢が緊張と対話の間で揺れる中での「安全弁」としての意味合いが大きい。短期的には、南シナ海・台湾周辺での接触事案の危機管理やホットラインの実効性向上が焦点となる。中期的には、相互の軍事活動の透明性や行動規範の議論を通じて、誤算を回避するルールづくりが鍵となるだろう。米側は抑止の信頼性を保ちながらも対話の窓を開き続け、中国側は主権・安全上の懸念を主張しつつ安定的関係の模索を続ける構図が当面は続くとみられる。
