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声明文を読み上げる声が、南アフリカ・ヨハネスブルクのG20首脳会場に静かに響いた。22日、欧州連合（EU）各国とカナダ、日本の首脳は、米国がまとめた28項目のウクライナ和平案について「さらなる作業が必要だ」との共同声明を公表した。ロシア寄りだと受け止められる内容に対し、同盟国が一斉に疑問を突きつけた形である。
G20で示された「追加作業」要求の中身
声明は、米国が提示した草案を「恒久的で公正な平和に不可欠な要素を含むが、追加の作業を要する土台」と位置づけた。署名したのはEU首脳と主要加盟国、ノルウェー、カナダ、日本などで、米国がボイコットして欠席する中、ヨハネスブルクで結束を示した。各国首脳はウクライナ抜きで和平の枠組みが固まることへの警戒感もにじませた。
特に強調されたのは、武力による国境変更を認めないという原則だ。声明は「国境は力によって変えてはならない」と明記し、東部ドンバスなどロシアが要求する領土の扱いに線を引いた。また、ウクライナ軍の規模を大幅に制限するという米国案の条項に懸念を示し、「防衛能力を損ないかねない」として見直しを求めた。
さらに、欧州連合や北大西洋条約機構（NATO）の将来に関わる項目については、それぞれの加盟国の同意が不可欠だと指摘した。米国主導の合意が、欧州やカナダ、日本の安全保障政策を事実上拘束することへの牽制でもある。各国は同時に「ウクライナへの支援継続の強さ」を改めて確認し、今後数日間、ウクライナと米国と緊密に調整すると約束した。
領土と安全保障を巡る米案の重さ
トランプ米大統領が承認したとされる28項目案は、ウクライナに厳しい選択を迫る。報道によれば、ロシアが完全掌握していない東部の一部からもウクライナ軍が撤収し、その地域は中立の非武装緩衝地帯となったうえで、事実上ロシア領として扱われる構想が含まれる。クリミア半島やルハンスク州、ドネツク州に対するロシアの支配も追認される見通しだ。
軍事面でも、ウクライナ軍の兵力や装備を大きく絞り込む規定が盛り込まれているとされる。トランプ氏は27日までに案を受け入れるようキーウに迫り、拒めば武器供与や情報支援を縮小する可能性を示唆した。プーチン大統領はこの枠組みについて「最終合意の基礎になり得る」と述べ、詳細協議に応じる姿勢を示している。期限付きの和平構想は、同盟国にも重い判断を迫っている。
一方で、ウクライナのゼレンスキー大統領は、同案をめぐり「歴史で最も厳しい局面の一つだ」と国民向け演説で語り、受け入れか拒否かの二者択一ではなく、修正案の提示で乗り切ろうとしている。近く欧米と安全保障担当者レベルの協議を開き、自国の主権とパートナーシップの両方を守る道を探る構えだ。静まり返った会場には、その行方を見守る各国の視線だけが交差しているように映る。
