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自民党が先送りしてきた防衛増税の所得税部分を、2027年1月から実施する案が動き出した。4日には党内で調整に入り、高市早苗首相も当初の慎重姿勢を転じて必要な財源確保に踏み切る構えだ。防衛費をGDP比2％に前倒しで達成する方針の裏で、家計や連立政権にどんな重さをもたらすのかが問われている。
暮らしから見た1％増税の意味
構想されているのは、今の所得税額に1％を上乗せする「防衛特別所得税（仮称）」だ。2027年1月から導入し、年間で2千億円強の税収を見込むと報じられている。 同時に東日本大震災の復興特別所得税を1％引き下げるため、当面は手取りがほとんど変わらないように見える設計になっている。
ただし、復興特別所得税は課税期間の延長によって穴埋めされる仕組みで、長い目では納税者の総負担は増える。 税金は給与から自動的に天引きされるため増税の実感は薄い一方、「復興と防衛の名目で二重に取られているのではないか」との受け止めも出かねない。生活必需品の値上がりが続く中、額が小さくても心理的な負担は無視できないとの指摘もある。
防衛費前倒しと連立政権の計算
高市政権は、防衛費を2027年度に国内総生産（GDP）比2％とする従来目標を、2025年度中に達成する方針を掲げた。 安全保障環境の一段の悪化を理由に、自衛隊の人員基盤やミサイル防衛、無人機対策などへの投資を急ぐ考えだ。目標の前倒しにより、5年間で43兆円規模とされる防衛費計画の中でも、早い段階から巨額の支出が必要になる。
その財源の一部として、政府・与党は法人税とたばこ税を2026年4月から、所得税は27年1月からと段階的な増税スケジュールを描いてきた。 しかし、防衛増税には以前から世論の反発が強く、高市首相自身も就任当初は所得増税に慎重だった。連立を組む日本維新の会も、野党時代に防衛増税へ反対しており、今回の所得増税案をめぐってなお協議が続いている。 景気や賃上げの行方が見通せない中で、いつ誰にどこまで負担を求めるのかが、政権運営の難所となっている。
