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記者団の視線が集まる中、赤沢亮正経済産業相は静かにマイクに向かった。台湾を巡る高市早苗首相の発言に対し、中国が日本への渡航を控えるよう呼びかけるなど緊張を強める中でも、「レアアースの輸出規制に急な変化は確認されていない」と現状を説明し、日本企業が気にする供給不安の度合いを丁寧に見極めようとしている姿がにじんだ。
中国の対日圧力とレアアース、揺れる供給網
中国はここ数年、半導体材料などに使われるガリウムやゲルマニウム、グラファイトに続き、レアアース全体でも輸出管理を強めてきた。輸出には当局の許可が必要になり、2025年春には特定のレアアースで規制が一段と厳しくなったことで、自動車部品の調達が滞り、日本の工場が一時的に止まる事態も起きている。
今回の高市発言をきっかけに、中国は日本への渡航や留学を慎重にするよう国民に注意を促し、交流を通じた圧力を強めた。しかし赤沢氏は、レアアースそのものの管理枠組みは以前からの延長線上にあり、足元で新たな締め付けは確認していないと説明する。その一方で、既に続いている規制が世界のサプライチェーンを揺さぶっているとして、同じ懸念を抱く国々と連携しながら、中国側に粘り強く是正を求めていく考えを示した。
マイナス成長の中で探る、次の投資の柱
前日公表された2025年7〜9月期の国内総生産（GDP）は、実質で前期比マイナス0.4％、年率換算マイナス1.8％と、6四半期ぶりのマイナス成長になった。背景には海外需要の鈍化で輸出が落ち込んだことに加え、金利上昇などを受けた住宅投資の減速がある。輸出に依存する日本経済にとって、中国との関係悪化や米中対立に絡む関税の応酬は、じわじわと重しになりつつある。
ただ、赤沢氏は国内の動きにわずかな明るさも見ている。企業の設備投資と家計の最終消費支出は、緩やかながら増加が続いているためだ。そこで同氏が掲げるのが、AI半導体や量子技術、バイオといった「危機管理にも直結する戦略分野」への大胆な投資だ。地政学リスクで既存の供給網が揺らぐ今こそ、国内に新たな生産や研究開発の拠点を築き、官民が一体でリスクを分散していく好機と捉えているように見える。
短期の数字は逆風を映していても、どこに資本と人材を振り向けるかで、数年後の景色は静かに変わっていく。
