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ロシア国防省は11日、ウクライナがロシア各地に大規模な無人機攻撃を仕掛けたと発表した。同省によると、全国で少なくとも287機のドローンを撃墜し、その一部は首都モスクワを含む複数の州で迎撃されたという。モスクワ州上空だけでも少なくとも40機が落とされたとされ、上空を縫うように飛ぶ無人機と防空ミサイルの音が市民の夜を覆った。
モスクワ住民と交通への影響
モスクワ州では防空部隊が次々に無人機を撃ち落とし、その結果、主要空港から発着する便の多くが別の都市や郊外の空港へ迂回させられた。一時的に滑走路が閉鎖された空港もあり、欠航や遅延に直面した乗客は、機内やロビーで行き先の案内を待ち続けた。市内中心部では大きな被害は確認されていないが、上空を警戒するサイレンや迎撃音が続き、住民は戦時下であることをあらためて意識させられた。
ロシア当局は、撃墜された無人機の多くが軍施設や重要インフラを狙っていたと主張しつつ、市民には「冷静さを保つように」と繰り返し呼びかけている。ただ、越境攻撃が繰り返される中で、前線は遠いと考えてきたモスクワ市民にも、いつ頭上が戦場になるか分からないという不安が広がりつつある。日々の通勤電車や学校行事が続く一方で、防空網の強化や避難経路の確認といった、平時と戦時が混ざり合うような生活が常態化しつつある。
長期化するドローン戦と後方のリスク
ロシアによるウクライナ侵攻は2022年2月に始まり、今も東部や南部ではロシア軍がウクライナ領の一部を占拠し続けている。長期化する戦争のなかで、双方は兵士の損失を抑えつつ相手国の後方に打撃を与える手段として無人機を多用してきた。ロシアはウクライナの電力網などをミサイルやドローンで繰り返し攻撃しており、ウクライナ側もロシア本土の石油精製所や軍事施設を狙う越境攻撃を強めている。
最近では黒海でロシアの石油輸送タンカーがウクライナの海上ドローン攻撃を受けて航行不能になったとされ、海上輸送やエネルギー供給にも影響が及び始めている。無人機による攻防がエスカレートするほど、どこが「後方」でどこが「安全地帯」なのかは一層あいまいになり、戦争の終わり方を巡る国際社会の議論も重みを増していきそうだ。
