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高市早苗首相は11月25日夜、トランプ米大統領との電話会談について首相官邸で記者団の質問に応じた。その数時間前、トランプ氏は中国の習近平国家主席とも約1時間の電話協議を終えたばかりだった。米紙ウォールストリート・ジャーナルは26日、2本の電話のあいだで交わされた言葉が、台湾情勢と米中の駆け引き、そして日本の立ち位置に静かに影を落としていると伝えている。
トランプ氏の助言は「撤回要求」ではなかった
同紙や通信社の報道によれば、トランプ氏は24日（日本時間25日）に行った高市首相との電話で、中国を過度に刺激しないよう台湾をめぐる発言の「音量を下げてほしい」と助言したとされる。一方で、今月初めの国会答弁そのものを取り消すよう迫ることはなく、日本側の事情も踏まえた穏やかな言い回しだったという。高市首相は会見で具体的なやり取りへの言及を避け、日米同盟の重要性や米中情勢の説明を受けたことだけを強調した。
発端となったのは、高市首相が国会で、中国が台湾に武力行使すれば日本にとって「生存を脅かす事態」となり、自衛隊の出動が理論上あり得ると答弁したことだ。戦後秩序や平和主義を重んじるとする中国政府はこの発言に強く反発し、撤回を要求した。だが日本側では、安保関連法に基づく一般論だとする説明が支持率上昇にもつながり、簡単には後退できない政治状況がある。トランプ氏の助言は、そうした国内事情と対中配慮のあいだを探る試みだったとみられる。
通商と台湾が絡む米中日の綱引き
トランプ氏が高市首相に電話をかける前に話していた相手は習近平氏だった。報道によると、約1時間の首脳電話のうち半分近くが台湾問題に費やされ、習氏は台湾は中国の一部だという歴史的主張と、米中が戦後の国際秩序を共に守るべきだという持論を重ねたという。直後には、中国共産党機関紙が社説で米国に対し「日本を抑えるよう」求め、日本の発言がかつての軍国主義の復活につながりかねないと警告した。背景には、米中が農産物やレアアースを含む通商交渉で一時的な休戦を模索している事情がある。
台湾側は、こうしたやり取りに神経をとがらせている。台湾政府要人は、「台湾の人々に中国へ“戻る”という選択肢はない」と繰り返し述べ、自らの主権と現状維持の姿勢を強調した。一方、日本政府は公式には米中関係の安定を歓迎するとしつつ、首相官邸は電話会談の詳細に沈黙を守る。世論調査では高市首相の対中強硬姿勢を支持する声が目立つ一方、米国が対中通商を優先し、日本の安全保障の懸念が脇に置かれないかを気にかける向きもある。静かな電話の応酬が、3つの民主主義と1つの大国を巻き込む力学を浮かび上がらせている。
