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トルコでの首脳会談の席で、ゼレンスキー大統領はエルドアン大統領と向き合っていた。同じ頃、ワシントンからは、ロシアとの戦争を終わらせるためには米国が用意した枠組みを受け入れるべきだという厳しいメッセージが届けられていた。領土の割譲や軍の縮小まで含むこの提案は、ウクライナにとって和平と主権のどちらを優先するのかという重い選択を突きつけている。
米案が突きつける領土と軍縮の代償
複数の関係者によれば、米政権はロシアとの停戦に向けた新たな枠組み案で、ウクライナに東部の一部地域を事実上ロシアに引き渡し、保有兵器の一部を放棄し、軍の規模も縮小するよう求めている。草案は米側が主導して作成され、キーウは内容作りに加わっていないが、ワシントンは「主要な項目だけでも受け入れてほしい」と大統領府に伝えたとされる。ウクライナ高官は、米露間で協議されている一連の案について「シグナルを受け取った」と認める一方、国内向けには具体的な譲歩条件を公にはしていない。
報道によれば、この枠組みは28項目から成る包括案として整理され、ウクライナが現在支配していない東部ドンバスの一部をロシアに明け渡す代わりに、将来の侵攻に備えた安全保障上の保証を米国が中心となって提供する構想だという。安全保障の保証とは、攻撃を受けた際に他国が防空や情報面などで支援する約束を指し、北大西洋条約機構の集団防衛義務よりは弱いが、それでも戦争抑止の柱になり得る。ゼレンスキー氏はテレグラムへの投稿で、流血を終わらせ長期的な平和を築くには各国と足並みをそろえ、米国のリーダーシップが強く機能し続けることが不可欠だと強調したが、米案そのものへの評価は避けた。
同盟国の反発とウクライナ国内の重荷
欧州の外交官たちは、この計画をめぐり複雑な受け止めを示している。ある外交官は、トランプ政権がウクライナに和平案の受け入れを迫ろうとしている可能性に言及しつつも、ウクライナや欧州の立場を無視した解決は「現実的ではない」と強調した。別の外交官は、ウクライナ軍の大幅縮小という条項について「真剣な提案というより、ロシア側の要求をなぞったものだ」と懸念を示した。これまで欧州諸国は、いかなる和平も領土の力による変更を認めるべきではないと繰り返し主張しており、今回の米案はその原則とどう折り合うのかが問われている。
一方のキーウでは、東部戦線での苦しい後退が続くなか、汚職疑惑を受けてエネルギー相と司法相が同時に解任され、政権は内外からの圧力にさらされている。そうした状況で領土や軍事力を手放す案を受け入れれば、政府への信頼が揺らぎかねないとの見方も強い。近く米軍高官らが首都を訪れ、戦場の実情や安全保障枠組みを協議する予定だ。ゼレンスキー氏はトルコを「和平のための場を提供する用意がある」と評価し、エルドアン大統領の仲介にも期待を示した。戦線の地図と外交テーブル、その両方が同時に動き続けるなか、和平への道筋はなお輪郭を結んでいない。
