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米国務省は現地時間11日、人工知能 (AI)に不可欠な半導体や重要鉱物の供給網を強化するため、日本や韓国などの高官を招いた会合を12日に開き、新たな経済安全保障の協力枠組みを立ち上げると明らかにした。会合には日本と韓国に加え、オランダや英国、イスラエル、UAE、オーストラリア、シンガポールも招かれ、ホワイトハウスでの協議を通じて合意文書や今後の投資方針をまとめる見通しだ。
AI時代の供給網、同盟国に広がる負担
米メディアJapan TimesやBloombergなどによると、新枠組みはAI向け高性能半導体やそれを作るためのレアアース、リチウムなどの重要鉱物を対象に、調達先の分散と長期契約を進めることが柱とされる。協議ではエネルギー、先端半導体の製造、AI向けデータセンター基盤、輸送物流まで含めて議論し、各国がどの分野で投資や輸出管理を担うか役割分担を探る。
背景には、レアアース精製や電池材料の加工の多くを中国企業が握り、AI向け半導体でも中国周辺への依存が残る構図がある。供給途絶や輸出規制が現実味を増すなか、米国は「同盟国ネットワーク」で代替鉱山の開発や精錬能力の増強を進めたい考えだ。日本や韓国には、既存の製造基地としてだけでなく、資源国への投資や技術支援を通じて上流工程に踏み込むことも求められる。
一方で、供給網の再編は企業側の負担増にもつながる。調達先を中国から他地域へ切り替えれば、コストやリードタイムは当面上昇しかねない。輸出管理や投資審査の強化も予想され、日韓企業は「安定調達」と「市場拡大」のどちらを優先するか、案件ごとに難しい判断を迫られる。今回の枠組みは、その選択を各国政府と企業が共有するための政治的な土台づくりと言える。
積み重ねられる対中けん制と既存枠組み
今回の協力枠組みは、突然現れた新構想ではない。米国と日本は2025年10月に重要鉱物とレアアースの供給確保に関する2国間フレームワークに合意し、鉱山投資や精錬、在庫備蓄まで一体で支援する方針を示している。また、日本と米国の環境当局は大阪・関西万博の会場で、ASEAN域内の電子ごみリサイクルを通じて重要鉱物を確保するセミナーも共催し、リサイクルを含む多層的な供給網づくりを進めてきた。
さらに、日本・韓国・米国の3カ国は、商務・産業担当閣僚会合の共同声明で、半導体や電池、AIを巡る経済安全保障分野での協力強化を確認している。今回の会合は、こうした既存の文書や声明で掲げた目標を、AI時代のサプライチェーンという具体的な分野で実行に移す場と位置づけられる。同時に、資源国の環境・人権リスクや、脱炭素と資源採掘拡大の両立といった矛盾も、同盟国側が正面から引き受けることになる。
米国が主導する「対中依存脱却」の枠組みが増えるほど、日本や韓国はパートナーとしての発言力を高められる一方で、自らも資金と技術、人材を投じる責任を負う。新たな協力枠組みが、単なる政治宣言にとどまらず、リサイクルや代替鉱山開発といった具体的なプロジェクトに結び付くかどうかが、AI時代の経済安全保障を左右する試金石となりそうだ。
参考・出典
- U.S. moves to deepen minerals supply chain in AI race with China
- United States – Japan Framework for Securing the Supply of Critical Minerals and Rare Earths through Mining and Processing
- Joint Statement: Japan-Republic of Korea-United States Commerce and Industry Ministerial Meeting | U.S. Department of Commerce
- U.S.-Japan Critical Minerals ASEAN Supply Chain Seminar: e-Waste Recycling
- Trump enlists 5 allies to counter China on rare earths and tech
