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貿易休戦の期限が近づく米中関係で、トランプ米大統領が再開交渉の優先課題としてレアアース（希土類）、合成麻薬フェンタニル、大豆、台湾を挙げた。11月1日の100％追加関税をちらつかせつつ、10月末のAPEC前後に習近平国家主席との会談を探る構図だ。圧力と対話が交錯し、緊張と期待が同時に膨らんでいる。
交渉再開へ、優先課題が並んだ
機内の白い照明に記者のメモが浮かぶ。大統領専用機でワシントンへ戻る途上、トランプ氏は「中国にレアアースで駆け引きしてほしくない」と語ったとされる。直前に中国が希土類と磁石などに広範な輸出規制を打ち出した経緯があり、米側は供給網全体に波及する不安を強く意識していると映る。
米側は同時に、フェンタニルおよび関連前駆体の流出抑制を中国に迫る姿勢を崩していない。現時点で確認される範囲では、米国内のオピオイド危機の要因として中国発の化学品が批判の的となっており、取り締まりや捜査協力の強化が議題に上る公算が大きい。保健と治安の論点が通商の場に持ち込まれている。
農業分野では、米産大豆の購入再開を含む農産物取引のてこ入れが焦点になっているとみられる。対中輸出の変調で中西部の生産者が受ける影響は大きく、合意の枠組みに農業パッケージを組み込めるかが政治的な重みを帯びる。経済と選挙区事情が交差し、交渉の呼吸を左右しつつある。
期限迫る「休戦」と100％関税の威嚇
米中が数カ月かけて積み上げた暫定的な関税休戦は11月10日に期限を迎える。延長や上乗せ合意がなければ、関税の応酬が再燃しかねない。しかもトランプ氏は、希土類の規制が撤回されない場合、11月1日に対中輸入へ100％の追加関税を発動し得ると警告した。休戦の終幕を待たず圧力を強める構えがにじむ。
一方で、同氏はテレビのインタビューで「持続可能ではない」とも語り、超高関税の副作用を認める発言をにじませた。ただ、「公平な取引でなければならない」と強調し、強硬と現実の間で揺れる本音をのぞかせた。市場では対話継続への期待が断片的に意識され、悲観一色ではない空気も広がったとみられる。
希土類はハイテク・防衛から自動車まで裾野が広い。中国の規制拡大は磁石や先端部材の供給を直撃し得るため、米側は代替調達の確保に加え、重要ソフトウエアの対中輸出に関する管理強化も選択肢として示唆している。供給網の綻びが交渉のてこになるのか、逆に相互依存のブレーキになるのか、岐路に立つ。
APEC前の駆け引き、マレーシアと韓国で交錯
実務線では、ベッセント米財務長官が来週マレーシアで何立峰副首相と会う見通しだ。両氏は直前にオンライン協議を行い、欧州各地で積み上げた暫定合意の延長策を探ってきた。合意の有効期限は11月10日までで、時間は多くない。東南アジアという中立的な舞台で、関税の火種をいかに封じ込めるかが問われる。
首脳レベルでは、トランプ氏が10月30日から11月1日のAPEC首脳会議に合わせ、韓国で習氏と会う意向を示している。具体的な日程や議題の詰めは続くとみられるが、休戦延長や希土類、フェンタニル、さらには台湾情勢までが一つのテーブルに並ぶ構図だ。会えば大枠、会えなければ関税——そんな二者択一が浮かぶ。
中国外務省は、首脳外交が米中関係に「代替不可能な指導的役割」を果たすと強調し、対話による解決を重ねて訴えている。力と理の綱引きの先に、相互尊重と互恵の原則をどう具体化するか。韓国とマレーシア、二つの交差点で積み上げられる一手一手が、11月の関税と休戦の行方を左右しそうだ。
