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農林水産省は6月12日の鈴木憲和農相の閣議後記者会見で、愛媛県が2022年に品種登録した高級かんきつ「愛媛果試第48号」(商標名「紅プリンセス」)について、中国で類似名称の苗木が販売されている事実を把握していると説明した。愛媛県は中国でも品種登録を出願中で、鈴木氏は県と緊密に連携し、優良品種の海外流出抑止に取り組む考えを示した。農林水産省は今夏、育成者権者に代わって権利を保護・活用する専門性のある育成者権管理機関を立ち上げる方針で、個別案件への対応と日本品種全体の保護体制強化が並行して進む。
「紅プリンセス」をめぐる権利保護の課題
問題の中心にある「紅プリンセス」は、愛媛県が長期にわたり育成してきた高付加価値のかんきつとされる。ブランド名としての「紅プリンセス」と、植物新品種としての「愛媛果試第48号」は区別して扱う必要がある。焦点は単なる名称の模倣ではなく、苗木や穂木が海外に持ち出され、無断で増殖・栽培されることをどう防ぐかにある。
植物新品種は、開発した自治体や研究機関にとって知的財産そのものだ。育成者権は、新しい品種をつくった側が増殖や販売を管理できる権利で、農産物の「特許」に近い役割を持つ。海外で権利を取らないまま栽培が広がれば、日本で時間と費用をかけて育てた品種の価値が失われかねない。
今回の対応では、愛媛県と国が連携し、海外での権利保護や流通監視を強める方針が示された。中国側で販売されている類似名称の苗木が同品種に当たるのか、また具体的にどの権利侵害に該当し得るのかは、現時点では断定できない。一方で、地方自治体が長期育成したブランド果実を海外でどう守るかは、全国の高付加価値品種にも共通する課題になっている。
海外流出防止体制の強化
農林水産省はこれまでも、植物新品種や育成者権の保護を政策課題として扱ってきた。2025年6月に決定された「農林水産省知的財産戦略2030」は、優良な植物新品種を保護・活用し、知的財産の戦略的な管理を進める方針を掲げている。国内で優れた品種を生み出しても、海外で登録や監視が追いつかなければ、収益やブランドが国外に流出する構図になり得るためだ。
国の実務面では、「植物品種等海外流出防止総合対策・推進事業」の実施主体として「植物品種等海外流出防止対策コンソーシアム」が置かれ、海外での品種登録や侵害対策の高度化を支援してきた。農研機構の種苗管理センターも品種保護対策に関わっている。今夏に立ち上げが予定される育成者権管理機関については、こうした既存事業との関係や役割分担を整理しながら、海外出願、契約管理、権利行使を実務面で支える体制づくりが課題となる。
鈴木氏は6月12日の会見で、2020年の種苗法改正により登録品種の海外持ち出しを制限できる制度を導入したことにも触れた。さらに、育成者権の保護強化に向けた種苗法改正法案が国会で審議されているとして、成立を目指す考えを示した。愛媛県の案件は、果樹やぶどう、いちごなど日本の高付加価値品種全体に波及する問題であり、海外展開を前提にした品種防衛の体制づくりが急務となっている。
