東大・慶大・JST、Mn3Sn次世代MRAM薄膜化で高速省電力へ

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東京大学、慶應義塾大学、JSTは2026年7月13日、反強磁性体Mn₃Snを使う次世代MRAMの高速・低消費電力化に向け、薄膜化と放熱性の向上が重要だとする素子設計指針を発表した。

約30ナノメートル以下で内因性機構が顕在化

松尾拓海氏、肥後友也氏、中辻知氏らの研究グループは、カイラル反強磁性体Mn₃Snと重金属Taの多層膜を作製した。Mn₃Sn層の膜厚を15~200ナノメートルの範囲で変え、スピン軌道トルク(SOT)による磁気スイッチングを調べた。

SOTは、重金属に流した電流をスピン流に変換し、隣接する磁性体のスピンにトルクを与える手法だ。今回の素子ではTaがスピン流源となり、Mn₃Snの磁気秩序に作用する。

Mn₃Sn層を約30ナノメートル以下にすると、熱が基板側へ逃げやすくなり、温度上昇と消費電力が抑えられた。これにより、温度アシストに依存せず、反強磁性秩序を保ったままスピン流が磁気秩序に直接作用する「内因性機構」が顕在化した。電流印加時の発熱自体がなくなるわけではないが、磁気秩序を失うほどの温度上昇を避けられる。

東大・慶大・JST、Mn3Sn次世代MRAM薄膜化で高速省電力へ

10ナノ秒パルスでも反転信号を維持

従来のMn₃SnのSOTスイッチングでは、電流によるジュール熱で反強磁性秩序がいったん失われ、冷却時に最終的な磁気状態が決まる「温度アシスト機構」が問題となっていた。先行研究では、100ナノ秒より短いパルスで信号の反転率が減衰しており、熱の発生と冷却が高速化の制約になっていた。

最も薄い15ナノメートルの素子では、電流パルス幅を100ミリ秒から10ナノ秒まで変えても、スイッチングに伴う電気信号の大きさは変わらなかった。Mn₃Snは反強磁性体でありながら磁気状態を電気的に読み出しやすい特性を持ち、今回の結果は膜厚と熱の逃がし方が動作機構を左右することを示した。

論文は2026年7月13日、Nature Communicationsに掲載された。今回の実験で直接確認した最短パルス幅は10ナノ秒であり、成果はMn₃Sn/Ta薄膜素子のさらなる高速・低消費電力化に向けた構造設計の指針となる。

参考・出典

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