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ケンブリッジ大学などは6月5日、AIを使って設計した汎サルベコウイルス・ワクチン候補「pEVAC-PS」の第1相臨床試験で、安全性に大きな懸念はみられず、初期の免疫応答を確認したと公表した。論文はJournal of Infectionに掲載された。研究チームは、活性成分をコンピューターシミュレーションで完全に設計したワクチンのヒト試験として初の事例だと位置付けている。
39人で確認した安全性と初期免疫応答
試験は39人の健康なボランティアを対象に実施された。参加者は18~50歳で、過去に新型コロナワクチンを2回または3回接種し、直近の感染確認歴がない人だった。第1相試験は主に安全性を確かめる段階であり、感染や発症をどれだけ防ぐかを結論づける試験ではない。
pEVAC-PSはDNAワクチンとして投与され、4段階の用量で安全性、反応原性、免疫原性が評価された。投与にはマイクロフルイディック・ジェットという針を使わない方法が用いられた。標的はSARS-CoV-2だけではなく、SARSや人獣共通感染の可能性がある関連コウモリウイルスを含むサルベコウイルス群である。
サルベコウイルスはコロナウイルスの一群で、SARS-CoV-2やSARSウイルスが含まれる。pEVAC-PSは、この群にまたがって比較的変わりにくい構造を狙う設計だ。論文によると、ウイルスが細胞に結合する際に重要な受容体結合領域(RBD)の配列を計算機で設計し、保存的な構造モチーフを組み込んだ候補とされる。
変異を後追いしないワクチン設計
今回のニュース性は、流行株が出てからワクチンを更新する発想ではなく、ウイルス群に共通する弱点を先に探して備える設計思想が、ヒトでの初期データを伴って示された点にある。設計には世界の監視プログラムで蓄積されたサルベコウイルスの遺伝子配列データを使い、機械学習で群全体に共通する抗原特徴を抽出した。
このため、pEVAC-PSは「万能ワクチン」というより、サルベコウイルス群を広くカバーすることを狙う候補とみるのが正確だ。既存ワクチンが変異株への追随を迫られやすいのに対し、将来出現し得る近縁ウイルスも見据えた先制型のワクチン設計として期待される。
ただし、現段階で確認されたのは安全性と初期の免疫応答であり、感染予防、発症予防、重症化予防にどこまでつながるかはまだ結論できない。論文は、参加者に既存の抗体が多く、Omicron流行期の曝露歴にもばらつきがあったため、免疫原性の解釈には制約があるとしている。今後は、より大規模で多様な集団を対象にした第2相以降の試験で、免疫応答の強さや広がり、将来のサルベコウイルスに対する備えとしての妥当性が検証される。
参考・出典
- New ‘universal vaccine’ technology could protect us from future virus outbreaks | University of Cambridge
- A phase I, needle free, dose escalation clinical trial of pEVAC-PS, a candidate pan-Sarbecovirus Vaccine – Journal of Infection
- ISRCTN – ISRCTN87813400: Phase I vaccine study of pEVAC-PS coronavirus vaccine
