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理化学研究所と東京医科大学などの研究チームは2026年6月19日、腸管で免疫の過剰反応を抑える制御性T細胞を、体内で増やす仕組みをマウスで示したと発表した。制御性T細胞を直接補うのではなく、その分化を促す抗原提示細胞側を調節する点が焦点となる。炎症性疾患や食物アレルギーなどの理解につながる成果として期待される。
免疫の「ブレーキ」を生み出す上流細胞
制御性T細胞は、免疫反応にブレーキをかける役割を持つ。腸管では食物や腸内細菌など、体に入ってくる多くの物質と日常的に接しており、必要以上に攻撃反応が起きないようにする仕組みが欠かせない。
研究チームは、末梢誘導性制御性T細胞の分化を促す抗原提示細胞「Thetis細胞」に着目した。発表内容では、Cbfβ2を欠くマウスでThetis細胞の複数のサブセットと腸管内の末梢誘導性制御性T細胞が失われ、大腸炎を自然発症した。一方、Runx1の発現を操作する条件では、Thetis細胞のうちTC-IVと末梢誘導性制御性T細胞が増えた。免疫のブレーキ役を直接増やすのではなく、ブレーキ役を生み出す側の細胞を動かす経路を示した形だ。
谷内一郎チームディレクターらの国際共同研究グループは、Runx系転写因子や免疫細胞の分化制御を継続的に研究してきた。転写因子は、細胞の中でどの遺伝子を働かせるかを調整する分子で、免疫細胞がどの役割を持つ細胞になるかを左右する。
腸管の免疫寛容研究の広がり
腸管免疫の研究では、制御性T細胞そのものに加え、食事由来の成分や腸内細菌に対して過剰反応しないよう免疫を導く抗原提示細胞(APC)、特にThetis細胞など、上流で免疫寛容を支える仕組みに関心が広がっている。免疫寛容とは、本来攻撃しなくてよいものを免疫が見逃す仕組みで、これが崩れると炎症やアレルギーにつながりやすい。
今回の成果は、その流れの中で、体内で末梢誘導性制御性T細胞を増やすための細胞側の調節機構を示すものと位置づけられる。ただし、現段階ではマウスでの知見であり、ヒトの食物アレルギーや炎症性疾患の治療に応用できるかは今後の検証課題となる。
参考・出典
- 免疫転写制御研究チーム | 理化学研究所
- 免疫細胞の運命を決める“リン酸化スイッチ”を発見 | 理化学研究所
- Phosphorylation of Runx protein controls helper CD4+ T cell versus cytotoxic CD8+ T cell lineage choice | Nature Immunology
- RORγt+ APCs require a distinct cis-regulatory element to instruct tolerance to dietary antigens | Nature Communications
- Runx/Cbfβ regulates the development of tolerogenic Thetis cells | PubMed
- 腸内細菌が作る酪酸が制御性T細胞への分化誘導のカギ | 理化学研究所
