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マイクロソフトは6月4日までに、人権関連の公開資料を更新し、2025年に浮上したイスラエル国防省(IMOD)によるAzureとAI技術の利用を巡る外部調査の総括と、今後のガバナンス・監督強化策を公表した。総括文書は同社の対応を「最終更新」と位置づけ、法律事務所Covington & Burling LLPによる調査が、ガーディアン報道の一部を裏付ける証拠を確認したと説明している。証拠には、オランダでのAzureストレージ利用とAIサービス利用に関する情報が含まれる。
AzureストレージとAIサービスを巡る調査
発端は2025年、ガーディアンがイスラエル国防省傘下の一部隊によるAzure利用疑惑を報じたことだった。報道は、パレスチナ市民の通話記録を広範または大量監視で得て、Azureに保存したとする内容だった。
マイクロソフトは5月15日の声明で、社員への聞き取りや文書評価を含むレビューを実施したと公表し、その時点ではAzureとAI技術がガザ紛争で人を標的にしたり、危害を与えたりするために使われた証拠は見つかっていないとしていた。その後、8月15日付の更新で、Covington & Burling LLPと独立コンサル企業の技術支援を得た正式レビューに入ると明らかにした。
同社は9月25日、調査で報道の一部を裏付ける証拠を確認したとして、IMODの特定サブスクリプションとサービスを停止・無効化した。対象には、特定のクラウドストレージ、AIサービス、関連技術の利用が含まれる。総括文書によると、調査はIMODの顧客コンテンツにはアクセスせず、マイクロソフト側の業務データを中心に行われた。
マイクロソフトは、IMODに対し、ソフトウェア、プロフェッショナルサービス、Azureクラウド、言語翻訳を含むAzure AIサービスを提供していると説明している。取引関係そのものを否定するのではなく、同社の利用規約や人権コミットメントに照らし、利用実態とリスクを確認したという位置づけだ。
国家安全保障関連の取引審査を見直し
今回の総括文書は、この問題を同社の人権デューデリジェンスの枠組みに位置づけている。人権デューデリジェンスとは、製品や取引が人権侵害につながるリスクを継続的に洗い出し、予防や是正につなげる仕組みを指す。マイクロソフトは、契約条項で人権侵害につながるサービス悪用を禁じるほか、製品設計、展開、市場参入、販売プロセス、供給網管理に人権面の検討を組み込むとしている。
強化策としては、国家安全保障関連の契約前審査の見直し、米国外市場における従業員のセキュリティクリアランス管理の点検、利用規定や国家安全保障関連ポリシーの定期レビュー、社員向けガイダンスの追加、技術開発・展開に関する懸念を社員が報告できる仕組みの拡充を挙げた。
このうち社員向けの報告制度では、Microsoft Integrity Portal内に「Trusted Technology Review」という新たな項目を設け、技術の開発や展開が同社方針に反するおそれがあると考えた社員が、匿名でも懸念を報告できるようにしたという。
公開アーカイブに組み込まれた人権対応
今回の更新は、単発の声明ではなく、人権透明性報告書や人権影響評価と並ぶ公開資料の一部として位置づけられた。マイクロソフトの人権ページは「Due diligence」「Remediation」「Transparency」を掲げ、企業としての人権コミットメント、透明性資料、影響評価への導線をまとめている。
総括文書は、同社の人権プログラムが国連「ビジネスと人権に関する指導原則」やOECDガイドラインなどに沿った継続的な取り組みだと説明している。2025年版の人権透明性報告書についても、従来のサプライチェーン報告と、より広い人権報告を統合したものと位置づけた。
一方で、総括文書は調査対象をIMODまたはイスラエル国防軍の一部隊という粒度で示しており、部隊名の公式な特定や、個別の承認権限、審査基準の詳細までは明らかにしていない。今後は、マイクロソフトが示した5領域の強化策が、政府・安全保障関連の取引審査やクラウド、AIサービスの提供実務でどの程度実効性を持つかが問われる。
