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東京大学の中西勇介准教授らの研究チームは、絶縁体の窒化ホウ素ナノチューブ(BNNT)内部で直径約1ナノメートルの単層二硫化モリブデン(MoS2)半導体ナノチューブを合成した。論文は2026年6月4日(現地時間)付の米科学誌サイエンスに掲載され、5日に共同発表された。GAA型次世代トランジスタの極細チャネル材料につながる成果として期待される。
ナノ空間で実現した1ナノメートル級の単層構造
MoS2などの遷移金属ダイカルコゲナイド(TMD)は、薄くしても半導体として働く材料として研究されてきた。ただ、チューブ状に丸めると構造にひずみが生じやすく、従来は直径10ナノメートルを超える多層構造になりやすかった。直径と原子配列をそろえた極細ナノチューブを作ることが課題だった。
研究チームは、BNNTの細い内部空間を反応場として使い、結晶成長を物理的に閉じ込めた。その結果、BNNTの内側にMoS2の単層ナノチューブが同軸状に形成された。1ナノメートルは1メートルの10億分の1で、原子数個分の幅に相当する極めて小さなスケールだ。
電子顕微鏡観察と分光分析により、合成したナノチューブが原子レベルで整った構造を持つことを確認した。さらに、直径が小さくなるほどバンドギャップが小さくなることも実験的に示した。バンドギャップは半導体が電気を流すかどうかを左右する重要な性質で、今回の結果は約四半世紀前からの理論予測を裏付けるものとなる。
次世代トランジスタ材料への手がかり
今回得られた構造は、半導体のMoS2ナノチューブを絶縁体のBNNTが外側から取り囲む形になっている。この同軸構造は、電流が流れるチャネルを周囲からゲートで制御するGAA型トランジスタの考え方と重なる。GAA型は、半導体素子をさらに小さくしながら電流のオン・オフを精密に制御する技術として重要性が高まっている。
一方で、今回の成果は材料合成と構造・電子状態の実証が中心であり、トランジスタそのものを作製した段階ではない。研究チームは、現在は数百ナノメートル規模にとどまる長さを約1マイクロメートルへ延ばすことや、他の無機ナノチューブ材料への展開を今後の課題としている。
