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東京大学工学系研究科とNTT株式会社の共同研究チームは5月25日、窒化アルミニウム(AlN)系ショットキーバリアダイオード(SBD)の試作で、比オン抵抗0.34 mΩ・cm²、逆方向耐圧400Vを示したと公表した。東京大学は、このオン抵抗をAlN系電子デバイスとして世界最小としている。AlN系パワー半導体の性能向上と実用化に向けた前進となる成果である。
低抵抗と400V耐圧を両立した素子構造
試作したSBDは、分極ドーピングを分散させた組成傾斜AlGaNドリフト層、Siドープ組成傾斜AlGaN中間層、AlN/AlGaN超格子電流拡散層を備える。SBDは金属と半導体の接合を使うダイオードで、電力変換時の損失を抑えやすい素子として使われる。
今回の素子は、電流を流しているときの損失の小ささを示す比オン抵抗で0.34 mΩ・cm²を記録した。逆方向に電圧をかけた際の耐圧は400V、最大絶縁破壊電界は8 MV/cmだった。絶縁破壊電界は、素子が高い電圧にどこまで耐えられるかを示す重要な指標である。
成果は、5月24〜28日に米ラスベガスで開かれた国際会議ISPSD 2026で「Extremely Low ON-Resistance AlN-based SBDs with Distributed Polarization Doping Drift Layer」として報告された。東京大学は6月2日、同発表で佐々木一晴氏がISPSD 2026 Charitat Young Researcher Awardを受賞したことも明らかにした。プロシーディングは2026年8月にIEEE Xploreで公開される予定である。
AlN系パワー半導体への一連の前進
AlNは6.0 eVの大きなバンドギャップエネルギーを持つウルトラワイドギャップ半導体である。高い電圧に耐えやすく、電力変換時のエネルギー損失を減らすパワー半導体材料として期待されている。
共同研究では2024年12月、NTTがほぼ理想的な特性を示すAlN系SBDの作製に成功し、東京大学がその電流輸送機構をトンネル効果に起因した熱電子電界放出と解明した。NTTはAlNトランジスタ開発で培った低抵抗オーミック電極形成技術を発展させ、接触抵抗を従来の10分の1以下に低減していた。
今回の成果は、こうした材料、接触、素子構造の蓄積を踏まえ、低オン抵抗と400V級耐圧を同時に示した性能実証に位置付けられる。実用化に向けては、長期信頼性の検証や量産プロセスとの適合性、既存のSiC・GaN系パワーデバイスとの比較評価が今後の課題となる。
