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徳島大学と岐阜大学の研究グループは2026年5月18日、560GHz帯で単一チャネル112Gbpsの無線伝送を実証したと発表した。同大は、420GHzを超える周波数帯では初の100Gbps級無線伝送実証と位置付けている。6Gで想定される超高速モバイルバックホールや、光ファイバー網と無線を一体で使う光・無線融合ネットワークに向け、テラヘルツ波の実用的な使い道を広げる成果となる。
350GHz超に踏み込んだ技術の芯
6Gでは、現在の携帯通信よりはるかに高い300GHz以上のテラヘルツ波の利用が想定されている。なかでも350GHzを超える帯域は、混み合う300GHz帯を避けつつ、基地局間や基地局と基幹網を結ぶバックホールで100Gbps超の大容量通信に応える候補となる。バックホールは通信網の「幹線道路」にあたり、ここが細いままでは端末側の通信速度を上げてもネットワーク全体の性能は伸びにくい。
今回の中核は、ソリトン・マイクロコムを用いたフォトニック無線伝送にある。マイクロコムは、極めて細かくそろった多数の光周波数を発生させる技術で、その高い周波数安定性を生かすことで、低位相雑音のテラヘルツ搬送波を生成できる。搬送波の揺らぎが小さいほど、16QAMのように情報を細かく詰め込む高次変調を安定して扱いやすくなる。
Communications Engineeringに掲載された関連論文では、hard-decision FECに適合する条件で、QPSK伝送を42GBaud、16QAM伝送を28GBaudで示した。名目線速度に換算すると、それぞれ84Gbps、112Gbpsに相当する。徳島大学などは2023年にマイクロ共振器ソリトンコムを用いた560GHz帯テラヘルツ通信を実証しており、今回の更新点は通信の成立そのものではなく、350GHz超の領域で100Gbps級へ踏み込んだ点にある。
6Gバックホールへ向けた基盤技術の前進
この成果は、6Gの商用化が目前に迫ったことを意味するものではない。むしろ、超高周波の無線区間を光技術で支え、100Gbps級のバックホールに使える可能性を示した基盤技術の前進と見るべきだ。光ファイバーで培われた安定な周波数制御を無線のテラヘルツ搬送波に持ち込めれば、将来のネットワークで有線と無線の境目をより滑らかにつなぐ設計が可能になる。
今後の焦点は、伝送距離をどこまで伸ばせるか、受信系の性能や誤り訂正後の余裕をどれだけ確保できるか、装置をどこまで小型化・安定化できるかに移る。査読論文で示された実験条件を踏まえ、周波数帯、変調方式、誤り訂正の条件、装置規模を他の6G候補技術と比較していくことも重要になる。
「世界初」と呼べる範囲は、あくまで徳島大学が示した「420GHzを超える周波数帯での初の100Gbps級無線伝送実証」に限られる。テラヘルツ通信全般や6G全体の実用化を達成したわけではない。それでも、560GHz帯という高い周波数で単一チャネル112Gbpsに到達したことは、次世代の超高速バックホールと光・無線融合ネットワークに向けた重要な到達点である。
参考・出典
- 〖Press Release〗First demonstration of 100 Gbps-class wireless transmission beyond 420 GHz: Toward ultra-high-speed mobile backhaul for 6G – Tokushima University
- 〖Press Release〗Successful terahertz wireless communication using a micro-resonator soliton comb: Expectations for next-generation mobile communications based on photonic technology | Institute of Post-LED Photonics, Tokushima University
- マイクロ光コムを用いたテラヘルツ通信に成功 〜光を用いた次世代移動通信に期待〜 | 研究・採択情報 | 岐阜大学
- Beyond 350 GHz: Single-channel 112 Gbps photonic wireless transmission at 560 GHz using soliton microcombs
