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トランプ米大統領は現地時間2026年6月22日、量子技術に関する2本の大統領令に署名した。一方は科学研究向けの量子コンピューター開発を加速し、もう一方は将来の暗号解読リスクに備えて政府システムのポスト量子暗号移行を進める内容である。米政権は量子を、産業競争力と安全保障の双方に関わる戦略技術として前面に押し出した。
研究開発と暗号防護の二正面
量子コンピューター開発では、科学研究に役立つ計算能力の実現が柱となる。大統領令は「Quantum Computer for Application Development and Discovery Science(QC-ADDS)」と呼ぶ取り組みを設け、科学的発見を可能にする規模の量子コンピューターをエネルギー省施設に届け、可能な範囲で研究コミュニティに提供する方針を掲げた。エネルギー長官には、90日以内に必要な技術仕様を特定して概要を公表し、180日以内に民間連携モデルや費用、規模、時期を検討するよう求めている。
政府システム防護の側では、ポスト量子暗号への移行が焦点となる。ポスト量子暗号とは、強力な量子コンピューターでも破りにくいよう設計された次世代の暗号技術を指す。暗号防護に関する大統領令は、各省庁に30日以内の移行責任者選定を求めたうえで、国家安全保障システムを除く高価値資産と高影響システムについて、鍵確立は2030年12月31日まで、デジタル署名は2031年12月31日までにポスト量子暗号へ移行する期限を示した。
同日の措置は、量子分野の資金支援、供給網整備、人材育成とも結びつく。研究開発を後押しするだけでなく、量子対応センサーやネットワークの導入計画、暗号防護を同時に進めることで、米政権は量子技術を産業育成とサイバー防衛の共通基盤として扱う姿勢を鮮明にした。
過去のサイバー政策から続く量子重視
今回の大統領令は、突然打ち出された単発の政策ではない。2025年6月6日の大統領令は、十分な能力を持つ量子コンピューターが現在の公開鍵暗号の多くを破り得るリスクを明記し、連邦政府にポスト量子暗号への移行準備を進めるよう指示した。2026年3月に公表されたサイバー戦略も、ポスト量子暗号の採用と安全な量子コンピューティングの推進を国家方針に位置付けている。
さらに政権は、トランプ氏が2018年に署名した国家量子イニシアチブ法を量子政策の基礎として位置付けている。量子をAIなどの重要・新興技術と並ぶ戦略分野として扱う流れが強まるなか、今後は国家量子戦略の180日以内の更新、QC-ADDSの仕様策定、政府高価値システムの2030年末・2031年末の移行期限を、どの省庁がどの予算と調達で実装するかが焦点となる。
参考・出典
- Fact Sheet: President Donald J. Trump Ushers in the Next Frontier of Quantum Innovation
- President Trump’s Cyber Strategy for America (PDF)
- Sustaining Select Efforts to Strengthen the Nation’s Cybersecurity and Amending Executive Order 13694 and Executive Order 14144
- The Latest: Vance says talks with Iran set ‘good foundation’ to reach permanent deal to end war
