東京大学、再発悪性神経膠腫でT-BV医師主導第I相試験開始

脳腫瘍の浮腫抑制を狙う「T-BV」、東大が反復投与の安全性確認に着手

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東京大学医科学研究所は2026年5月20日、ベバシズマブ発現型がん治療用ヘルペスウイルス「T-BV」を使う医師主導の第I相臨床試験を開始したと発表した。対象は、初期治療後に再発または再増大したグレード4悪性神経膠腫の患者で、主目的は腫瘍内に繰り返し投与した際の安全性を評価することだ。

腫れを抑える設計の次世代ウイルス療法

T-BVは、がん細胞を攻撃するよう設計された単純ヘルペスウイルス1型に、ベバシズマブを発現する機能を組み込んだ候補治療である。ベバシズマブは血管内皮増殖因子(VEGF)の働きを抑える抗体で、腫瘍周辺の血管新生や浮腫に関わる経路を標的にする。東京大学医科学研究所は、T-BVが腫瘍内でベバシズマブを出しながら増えることで、腫瘍の腫れや脳浮腫の発生を抑えることが期待されると説明している。

臨床研究等提出・公開システムに掲載された試験名は「悪性神経膠腫患者に対するベバシズマブ発現型抗がんヘルペスウイルス(T-BV)を用いた第I相臨床試験」。統括管理者の所属機関は東京大学医科学研究所附属病院で、目標症例数は12例、主要評価項目は安全性の評価とされている。試験では、T-BVを腫瘍内に反復投与した際の有害事象などを調べる。

対象となるグレード4悪性神経膠腫には、膠芽腫(IDH-wildtype)やグレード4星細胞腫(IDH-mutant)が含まれる。いずれも悪性度が高く、標準治療後に再び大きくなった場合の治療選択肢が限られる疾患群である。今回の試験は、そうした再発・再増大例を対象に、まず人に投与できる安全性の範囲を見極める段階となる。

G47Δの実績を踏まえた改良候補

東京大学のウイルス療法では、先行するG47Δがすでに悪性神経膠腫を適応症とする再生医療等製品「デリタクト注」として承認されている。東京大学はこの承認を「世界初の脳腫瘍ウイルス療法」と位置づけており、T-BVはその流れを受けた次世代型候補にあたる。

デリタクト注(一般名テセルパツレブ)は、腫瘍内に直接投与され、腫瘍細胞で選択的に増えることでがん細胞を傷害し、さらに抗腫瘍免疫を誘導する製品と整理されている。簡単に言えば、ウイルスを「がん細胞の中で働く攻撃役」として使い、体の免疫反応も治療に引き込む考え方だ。

ただし、今回のT-BVは承認や実用化に進んだ段階ではない。第I相臨床試験は、有効性を結論づける前に、安全に投与できるかを確かめる初期の臨床段階である。既承認品で築いた技術基盤に、ベバシズマブ発現という新たな機能を加えたT-BVについて、まず安全性を確認し、その後の有効性評価に進めるかを見極める段階となる。

参考・出典

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