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大阪大学の研究チームは、心筋梗塞後に起きる心不全に対し、回復に関わる5種類の遺伝子をmRNAとして同時に届ける治療設計を開発し、マウスで心機能と生存率の改善を示した。論文は2026年5月23日、Small Scienceにオンライン公開された。
5遺伝子を心筋へ届ける多面的な修復設計
心筋梗塞後の心不全では、炎症、線維化、心筋細胞の死、血流低下などが同時に進む。ひとつの異常だけを狙う治療では、壊れた心臓の回復を十分に促しにくいことが課題だった。
研究チームは、Hgf、Igf1、Pdgfb、Cxcl12、Tgfb1の5つの遺伝子を選び、これらをmRNAにして投与した。mRNAは、体内の細胞に一時的に特定のたんぱく質を作らせる設計図にあたる。今回は炎症を起こしにくいナノミセル型キャリアに包み、心臓へ局所的に届ける方法を用いた。
マウスの心筋梗塞モデルでは、心筋梗塞による組織ダメージの抑制、血管新生の促進、線維化の抑制、組織修復の促進、心筋細胞死の減少が確認された。これに伴い、心機能が改善し、生存率も向上した。
臨床応用は今後の検証課題
今回の成果の焦点は、単一のmRNAではなく、複数の修復因子を組み合わせて一括で届ける「多因子mRNA治療」の有効性を示した点にある。心筋梗塞後の心不全のように複数の異常が絡み合う病態では、ひとつの作用だけでなく、血管形成や線維化抑制、細胞死の抑制を同時に狙う設計が理にかなう。
一方、今回示された有効性はマウスでの前臨床研究の結果である。ヒトでの有効性や安全性、投与量、投与回数、実際の医療現場での投与方法は今後の検証課題となる。研究チームは、この成果について、心筋梗塞後心不全のように複数の異常が絡む病態へ多因子mRNA治療を応用する土台となり、将来的に心疾患に対する新しいmRNA医薬・核酸医薬や再生治療の開発につながる可能性があると位置づけている。
